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2007年6月 1日 (金)

バブルとその崩壊の論理について = JPMorgan 北野レポートを読み解く

☆ JPMorganの北野氏が面白い指摘をしている。少々異論があるので,北野氏の論旨を紹介しながら検討する。

☆ 北野氏が注目したのは時価総額と名目GDPの推移で,これを1980年代後半の日本(Topix),1990年代後半の米国(S&P500)のそれぞれで見ると,時価総額対GDP比率が1.4に接近したところで破裂しているという。一方,現在の中国(上海,新センそれぞれのA,B株)は0.8であり,当時の日米水準に達していない。更に言うと,これら市場に対する海外からの流入資金は小規模に過ぎない。

☆ 次に北野氏はFRBグリーンスパン「前」議長の発言にも注目する。グリーンスパンがFRB議長時代「根拠なき熱狂なのかどうか。。。」と発言したのは,1996年12月。当時,米国の時価総額対名目GDP比は,現在の中国の値に近い0.7であり,この発言からITバブル崩落までは更に4年がかかっている。ゆえに北野氏は「最終的にはグリーンスパンは正しいのだと思うが,予測誤差は数年単位に及ぶことがある」と指摘している。

☆ 有名なエピソードだが,米国で大恐慌を前にして「株式市場の崩落」を予告し続けた人がいる。その数30数回。それだけ「当たらなくても言い続ければいつか当たる」。似たような話に某資産家は街角で靴を磨いて貰った時に靴磨きの青年から「株式投資はしていないのか」と尋ねられ,その直後に持ち株を全部売ったというのがあるが,当時の米国の資産支配状況を考えるとこの話は出来過ぎ君かインサイダーのどちらかであろう。もっとも,大恐慌の間際までジェシー・リバモアが空売りを重ねていたというのは事実であるらしいが。

☆ さて,北野氏はグリーンスパン発言「このままいくといずれ中国株は劇的な収縮に見舞われるだろう」をいったん引き取った上で,こう問いかける。「それによって適正なバリュエーションを維持しているほかの国の株式相場が連れ安しなければならない理由はない(のではないか?)」。ここで北野氏が例示するのは,日本株のバブル崩壊時の影響の低さだ。

☆ むしろ。。。と北野氏は指摘する。世界経済の体温計として考えた場合,2005年まで下げ続け,その後反転上昇している中国株よりも,2003年以降上昇トレンドを維持している米国金利の方が信頼できるのではないか。そして米国金利が上昇トレンドを維持している中での中国株の下落に対してはまだ冷静に対応できるように思われると締めくくっている。

☆ ここから北野氏の強気が覗えるのだが,確かにわれわれは歴史に学ぶ必要はある。大恐慌までの米国株はいったい何年間上がり続けたのだろうか。それは説得力がある主張だ。さらに円高不況の1987年春を底に上昇し続けたハイテク相場。その1年前から橘田天皇の号令の下,ウォーターフロントを駆け上がった野村の「大腕力相場」,あれに匹敵するのは,ソニー,ソフトバンク,光通信の大暴騰相場。別名「アナリストと掲示板の大相場」とでも言うべきITバブル相場であろう。これらの相場の特徴は,全員がイケイケになっただけではバブルは崩壊しないということである。何か予兆ときっかけがないとこうした相場は崩壊しない。

☆ 日本のバブル相場の最後は組織暴力団の首領まで巻き込んだ仕手相場だった。そこではモラルハザードの典型と人為的に歪まされた先物相場が織りなす壮大な「祭り」があった。片倉工業や松坂屋の株価を覚えているだろうか?若築建設株の崩壊が何の引き金を引いたのか,木戸"修羅場"次郎氏に尋ねてみるといい。

☆ アラン・グリーンスパンという人物は,根っからのエコノミストである。生涯一エコノミストとして,米国経済史に名を遺すであろう。しかし,エコノミストは常に間違う。それは人間の心理の綾までを分析することが出来ないからだ。中国であろうと日本であろうと米国であろうとブラジルやインドであろうと,相場とは還元すれば「人間が織りなすもの」であるから,その死命を握るのは個々のバラバラで自分勝手な人間達である。先物を知らずに現物株の仕手相場を続けた日本のバブル。財務諸表より掲示板が優先された米国のITバブル相場。夢と現実の区別もつかないアナリストレポートが振り回した日本のITバブル相場。それは残念ながら「歴史」ではなく「経験」の集積に他ならない。中国のバブル相場にいちばん不足しているものこそがこの「経験」である。経験はしてみないと分からない。つまり「バブルは弾けてみないと分からない」。いかに北野氏が賢察しようと,これだけは想像も及ばない。

☆ そして今年の秋は,中国・米国ともに政治の秋である。果たしてここでリアルな「桐一葉」が落ちることとなるのか,あたしには理解できない。ただ,壮大な収縮の後,何にベットすべきなのか,それだけが今の頭痛の種である。

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コメント

こちらで株ブログを継続されるようで、一安心です(^▽^)

しかし、上海がこけたのに資源関連が強いですね…。水曜はビビリで信用短期買いを全部投げてしまったので、来週また1から組みなおしになってしまいました_| ̄|○

中国株の動きのどの程度の部分が水準訂正で、どの程度の部分がバブリィオーバーシュートなのか…。実際に弾けてみないと分からないので怖い怖いと言いつつも、なんとかしがみついていきたいです(^▽^;)

投稿: けろたん | 2007年6月 2日 (土) 18時27分

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