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2007年5月 2日 (水)

投稿貴族「床明」の議を読む

☆ 日本経済新聞夕刊のマーケット総合2面のコラム「十字路」は基本的に記名投稿で,夕刊コラムに良くあるパターンだが,数人のコラムニストが交替で書いている。面白いのは朝刊の「大機小機」と異なり,発行会社,運用者,学識経験者など投稿子が自らの立場(肩書・氏名)を明らかにして投稿していることで,言うまでもなくそれらは各人の「個人的な見解」ではあるが,取り上げている問題はアップ・トゥ・デイトなものばかりである点は「大機小機」にも通ずる。

☆ ところでこんな世界にも例外というものはあるらしく,筆名(以下HNと呼ぶ)で文章を書ける「特権」をお持ちの方がいる。あたしはこれらHNを「投稿貴族」と呼んでいるのだが,2007年5月1日の「十字路」はそうした「投稿貴族」のひとりHN「床明」がなかなか興味深いことを書いていた。

☆ 少し前にチョッとだけ関係することについて触れたが,経済財政諮問委員会議に「金融・資本市場ワーキンググループ(以下WGと呼ぶ)」という下部組織があり,斯界の権威早大上村達男教授が「主査」(←カコイイネ^^;)となり,内容を取りまとめている(これは床明に言われなくても知っている)。

☆ 床明も指摘しているが,このWGの目的は東京金融市場の競争力向上策,有り体に言えばシンガポール・香港(いずれ上海)との競争に耐えうる金融市場を東京に作っていくためにはどんなことが必要かという戦略を練っているところというイメージだ。

☆ 床明が指摘しているようにWGはひとつの大きな「金融商品取引所」持ち株会社を設立し,その下に目的別(証券・商品等)の取引所を事業会社としてぶら下げるという構想である。おそらくWGの趣旨は金融商品取引法と会社法の精神に則り,合理的・一元的(つまり世界に向けて競争力があり,また世界の資金を受け入れやすい)取引所の形態を模索することにあるのだろう。

☆ ところで,この「十字路」を読んでいると,床明は証券取引所の現状にはやけに詳しい割に,商品取引所については冷淡なことがわかる。地方証取といっても名古屋と他二つを同列に扱うのは伊勢町の人達も承知しないだろう。しかし,いちばん問題がありそうなのもセントレックスを抱えた伊勢町だということを考えれば,同列に扱われても仕方がないかもしれない。ジャスダックの場口銭(ばこうせん)については,考えたこともなかったので,この指摘は参考になったが。。。

☆ 地方証取だけでなく新興市場全体に言えるのだが,規制緩和のために行ったことが「規律の緩み」を招いているのではないかという問題意識がある。これは床明のみならず,あたしの駄文を読む人にはお馴染みの盤側だの渾沌だのといった反動主義者達にも共通の問題意識である(あんな連中と同じ問題意識なのが情けないが,事実だからしょうがない^^;)。規律緩和の挙げ句が「なんちゃってIPOマーケット」と「会社ごっこ」の「魅惑のサイクル」なわけで,あたしから見ても明日上場廃止にしてええわという企業の数は20を下らない。こんな情けないことが起きたのは規制緩和の前に規律を定めておかなかったこの国の市場関係者(先ほどの反動主義者達を代表とする「証券論壇」も含む)のどうしようもない脇の甘さにあるのではないかと痛切に感じる。

☆ ところでこのコラムの中で,床明は「一つの取引所」への統合に疑問を呈している。競争がなくなれば組織運営は官僚的になり,事なかれ主義の集団になりかねない。けだし,その通り。だから上場企業は株主の牽制を受けるべきで,これを外部統制とするなら,内部統制によって組織のステークホルダーを守りながらも緊張感を持った経営ができるのである。彼等が指摘している事柄は,実に彼等が大嫌いな「株主至上主義」に良く似ているのは皮肉な話だ。

☆ あたしも床明の言わんとするところは理解できる。一極集中では弊害も多い。しかし,複数の証券取引所を残すのが正解なのか,ひとつの持ち株会社の中で複数の事業会社が利益相反を承知の上で競合すべきなのか,それとも規制機関のみを統合して,各取引所の自由競争に任せるべきなのか,なかなか正解には至らない。多様な考え方を認め合うという意味で複数の取引所の併存にはあたしも賛成である。しかし,それは取引所の運営や参加者に対する内部統制も含めた規律が維持されてこそ意味があることで,物理的に複数有ればいいというような類の話ではないのではないかとも感じている。

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