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2006年12月19日 (火)

ウチ目均考(23)~誘導者への異議申し立て

日本経済新聞第43439号 2006年12月19日(火)第17面(投資・財務2)コラム「一目均衡」=内部統制プレミアム=


☆ これを書いた編集委員小平龍四郎は,米国で実際に会計不信からサーベンス・オクスレー・アクト(米国企業改革法)へ連なる混乱を現地で見てきた。昨今はJ-SOXなどという気の利いた名前で売込みが喧しいが,この規制に対応することがどうして必要なのかという基本的な議論が全くなされないまま,米国の右向け右でビジネス化していることに底の浅さというよりもしろ胡散臭さを感ぜずにはいられない。


☆ この法律の精神を見ていると,ISO9000シリーズ会計版のような印象を受ける。ISO,国際標準化機構の9000番台は,最初,製造業における品質保証の規格としてスタートした。最終的な製品の品質保証を考える場合,アッセンブリ(組立工程)だけが品質の対象ではなく,その原料や労働環境といったものの全てが製品品質を左右する。つまり,原料からスタートし,購買,製造,出荷,販売と網目状に広がりを持つ一連の工程全体が,保証されるべき品質として品質マネジメントシステムを形成している。


☆ 日経の「一目均衡」で紹介されているTDKの対応を見ても分るが,各工程における細かなリスクの洗い出し,その個別に対する対応策の提示と検証(PDCAサイクル)。。。実際にこの担当をした人間がいれば,それがどれほど「果てしない」問題であるか,言語を絶することだろう。小平三菱電機の例を引きながら「内部統制ルールに伴う文書化は,企業にたまった暗黙知を株式市場に理解されやすい形式知に翻訳する作業だともいえる。」と呑気に書いているが,今までのすべてのマニュアルが失敗し続けたことを,たった一つの法律のお陰で万能にも,何の障害もなく出来るようになるとでも思っているのだろうか?そんな夢みたいなことが出来れば,人間はもう必要ないということにはならないか?この膨大な消しこみ作業が,単なる作業の消しこみとしてしか捉えられないのであれば,虚しいと言う前に人的資源の無駄遣い以上の何であるのだろうか?小平はそれを「内部統制プレミアム」と呼んでいるが,そうでもなければ,こんな賽の河原の石積みみたいなことをやらされている善良なサラリーマン達の努力は報われないことだろう。


☆ 確かに上場企業の中には,株価表に名前を載せるのも恥ずかしいデタラメな企業が山ほど存在している。こういう企業が来年以降,順次淘汰されるのは既に予想した通りであるが,そういうデタラメな会社のとばっちりでJ-SOXなどというものが罷り通る現実こそ,市場の精神的貧困そのものではないか。会社単位どころか市場単位で詐欺まがいな上場が罷り通っている現状こそ,まず是正されるべきではないのか?ここでこう書いたところで,金融商品取引法は個人情報保護法同様に成立し,やがて全面施行される(だから,これを書いている今現在は,まだ「証券取引法」なのだが)以上,激変緩和措置が必要なのではないかと考えてしまう。


☆ ところで,小平は素知らぬ貌でこう書いている。

> 内を見つめ直す日本企業が,市場にさらすものは何か。プレミアムがつくばかりか,逆に無残にはげ落ちる企業もあるはず。日興コーディアルグループや,ミサワホームホールディングスの子会社で不適切決算が明らかになったのは,皮肉なほどタイムリーだ。


☆ これに対して昨日このようなメールマガジンを読んだ。あたしは,この感想の方が正しい思う。


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2006/12/18 No.1228
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   今日のNews
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●証券大手日興コーディアルグループが2005年3月期決算で、不適切な
  会計処理をした疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が調べを
 進めていることが15日、明らかになった。グループ企業の会計処理で
 利益を水増しした疑いがもたれている。
                 日本経済新聞 12月16日
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   佐々木の視点・考え方
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★このニュースの仕組みはライブドア事件と全く一緒。傘下のSPCを使って、利益操作をしていたもの。
 このことを採りあげた3月16日の参議院での質疑によると、質問者はライブドア事件よりも悪質だと言っている。
 http://tinyurl.com/y8ps9t
 このニュースを読んで「新しい事件?」と思ったが、朝日新聞の土曜日の記事中にあった表を見て、以前に当メルマガで書いた問題だと気付く。

引用開始---------------------------
                     2006/02/01 No.1037
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   佐々木の視点・考え方
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★大手証券は、上場企業の公開やエクイティファイナンスの引受けや、株式仲介業務を通じて株式市場や上場企業に多大な影響を与える存在。
 それゆえ、証券会社の財務諸表やディスクローズ姿勢は公開企業全てに模範となるものでなければいけない。
 さて、昨今のマスコミを賑わすIT関連企業騒動で重要な役割をするのがSPC(特定目的会社)。
 3社とも子会社に投資会社を持ち、その子会社(孫に当たる)がSPCを作っていて、そのSPCを使って株式投資をしている。つまり、株式投資先は証券会社の曾孫に当たる。
 孫も曾孫の株も過半数を所有しているのだから、会計原則から言えば連結範囲に含めた会計処理をしなければならない。
 しかし、大手3社は傘下のSPCを巡って異なる会計処理をしている。3社が決算するに当り、どこまで連結範囲に含めているかは下のとおり。

            野村   大和   日興
(親)持株会社            ◎   ◎      ◎
(子) 投資会社      ◎   ◎    ◎
(孫)SPC        ◎   ◎    ×
(曾孫)投資先企業   ◎   ×    ×

 思い起こせば山一證券が破綻したのは「飛ばし」によってだった。不良債権を本体以外のペーパー企業に付け替えた処理が常態化し、支えきれなくなって倒産した。
 SPCやその投資先を本体の財務諸表から外すのは、含み損の有無はともかく、山一と同じ事をしているとしかみえない。
 もし、日本の上場企業が全て野村證券のような会計処理を義務付けられていれば、あるいは監査法人が見逃さなければ、マスコミを賑わすIT関連企業騒動のようなことは起きてはいない。
 この意味で、日興や日興の監査法人の中央青山の責は免れない。

引用終了-------------------------
 
 この問題は、2004年に発生した問題なのに、そして一部メディアで問題にされたのは2005年に話なのに、2006年には国会でも5回も話題にされた話なのに、大手新聞等では扱わなかった。
 このため、私自身は、随分前から知っていた話なのだが、株価等の投資に与える影響がいつ出てくるかが全く分からないので、投資判断に悩む。本当に日本株は難しい。

★本来のニュースは「AということをBがした。」と言う形。
  しかし、現在のニュースは「Aと言うことをBがした。この事をC記者がD時点で知って、E時点で報道された。」という流れ。CからEまでを知ることが日本の投資家に求められる。 
 そもそも、日本で投資しなきゃ良いのだけど。

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☆ 同じ頃,無邪気に「私の履歴書」にこんなことを書いている人物がいた。

(引用「私の履歴書」渡邉恒雄=第17回=日本経済新聞第43439号 2006年12月18日(月)第44面(文化))

> 週刊誌にも匿名で書いていた。当時の週刊誌はスキャンダリズムではなく,直球の原稿が書けたからだ。その後,週刊誌の性格が変わったので,私はこのような外注執筆を部下に厳禁した。勝手と言われても仕方がない。

☆ 週刊誌に直球が書けたのは,記者クラブ制度が無かったからだろう。記者クラブ制度で既得権益をこしらえて,自分達の都合の良いタイミングでリリースするのは他ならぬ新聞ではないか。山一證券の第一回「日銀特融」の時だってそうだった。やがて週刊誌も似たような縛りを入れ始め,外部のライターが自由に原稿を取ってくるようになって,その結果がスキャンダリズムや今じゃ素人もこぞって参加するパパラッチではないか。

☆ 結果の方から物事を書くのは簡単だが,原因はどこにあるのかを見ている人間が何も知らないと思うのは,思い上がりも甚だしいというものだ。

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