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2006年11月15日 (水)

ウチ目均考(21) 証券優遇税制撤廃反対論を読む

日本経済新聞第43405号(2006年11月14日 夕刊)第7(マーケット総合2)面
十字路「層の厚い資本市場構築こそが課題」(吉田経済産業ラボ代表 吉田 春樹氏)

☆ 筆者は結論を先に書き,その理由を詳述している。あたしもその論旨に賛同するのだが,引用しながら読んでみたい。

> 個人投資家に対する証券優遇税制の撤廃は時期尚早だ。
> 日本はバブル崩壊後,構造改革に取り組んで来た。それは明治維新,アジア太平洋戦争の敗戦時と同様,国の在り方を革命的に組み替えようとするものである。

☆ 議論の前提となる認識。バブル崩壊は確かに日本一国のことであったが,その背景には冷戦構造の終結による国際秩序の再構築があった。いわゆる「ハゲタカ論者」の言を借りるまでもなく,米ソ二大陣営の対立という冷戦構造が崩壊したきっかけは国際経済の資本主義的加速にある。これは労働力が産み出す剰余価値から情報や技術力が産み出す付加価値への価値前提の大転換がベースであり,19世紀的資本観から逃れられないマルクス主義が教条化すれば自壊は必然のものであった。

☆ だからといって,マルキシズム的価値観に変わったものはイデオロギーではなく市場経済という実際的なものであるから,その市場のルールを確立することはすなわち市場における主導権(ヘゲモニー)の争奪戦となることは,これも必然である。バブル崩壊とは,まさにそういう名前の本があったように「経済敗戦」であり,1980年代当初に輝いた「No.1としての日本」は,それを支えていた冷戦構造もろとも自壊してしまったのである。だから小泉であろうが誰であろうが「国の在り方を革命的に組み替え」ない限り,日は沈み続けるのもまた必定だった。

> 政治の分野では小選挙区制が導入され,派閥政治が形骸化しつつある。地方分権に着手し,憲法改正も議論しようというところまで来た。経済の分野では新会社法が制定され,銀行を含めて旧財閥を超えた再編成が活発だ。企業経営の改革が進行中である。
> しかし,これらは目標に対していずれも道半ばだ。

> 焦点を資本主義の視点からの企業経営に絞ろう。改革の大きな流れは間接金融から直接金融への移行にある。なぜか。それは企業の自主性と機動性を確立し,上場企業にあっては,株主重視の経営を実現するためである。
> それゆえに,バブル崩壊不況のなかで,銀行の持ち株制限が強化された。銀行経営健全化とともに,銀行,企業などの持ち合い株式解消が不可欠であったからである。

☆ ここでの議論のポイントは,先ほど述べたポスト冷戦下の国際社会が市場経済をキーワードに再構成されてきたことと対応している。市場経済モデルの中で最も優越したもの(デファクト・スタンダード)は,基本的には米国モデルであった。米国が投資銀行中心のモデルに転換した最大の理由は,英国のビッグ・バンに倣ったメイ・デイの金融規制緩和からで,それは冷戦崩壊時には既に10年ほどの蓄積があった。この蓄積を最大限に利用し,英米圏スケールでの国際金融再編を進めていった米国に,欧州の一部が続き,遅れて(というより,国際決済銀行(=BIS)に引き摺られるように大蔵省(当時)と日本の金融資本が「日本版ビッグ・バン」の御輿を上げたのである。現在の会社法に至る商法の改正作業が結実していったここ8年ほどは,さらにインフラとしてのインターネットという強力な統合手段が現れたことで「遅れた者は生き残れない」ことが明確化した。法律や制度が後追いになるのは仕方がないが,それでも遅れることは許されなかったのである。

> 結果はどうか。15年前と比較して金融機関と事業法人の株式市場における保有比率はともに約10%低下したが,数字上は,それを外国人が全部肩代わった姿(2005年末外国人保有比率27%)となっている。個人の保有比率は約20%で,ほとんど動かなかった。この事を裏側から個人金融資産残高比率で見ると,アメリカでは株式・出資が30%強であるのに対し,日本では約10%しかない。なぜ,もっと個人保有比率が高くならないのか。

☆ まさにここが構造問題なのである。個人投資家という時,もちろん株式投資をやっている人という意味があるが,投資信託などでリスク資産を購入した個人もまた増えている。これらは狭義の個人投資家には入らないだろうが,広義では市場の影響を受ける人達でもある。もちろんこれだけでなく,今後は定年退職により長年にわたって勤めてきた会社の持ち株会から株式を受け取る人も増えてくるだろう。個人投資家になる意思も無いまま,結果として個人投資家にカウントされる人達が増えていくことになる。今の優遇税制を単純に撤廃して不利益を蒙るのは,デイ・トレーダーばかりでなく,こういう人達ということになる。それでいいのだろうか?

> 07年には,外国企業による三角合併の解禁,郵政民営化の前進など,引き続き市場環境が大きく変わる。層の厚い資本市場を築くためには,個人投資家の育成こそ最重要課題だ。いま個人の証券税制に手をつける時ではない。
> 日本の革命的改革は道半ばである。すべてに大所高所の判断が求められている。

☆ 個人投資家の育成は,まずファイナンシャル・リテラシーの問題でもあり,自らリスクを取って行動することは,ひとえに株式投資だけでなく,これからの自立した個人に求められることである。デイ・トレーディングだけでなく,それぞれの資金の性格や自分の人生設計を念頭に入れた資産形成の場としての株式市場を経済だけでなく「家計」の基礎インフラとしていかなくて,市場経済社会を生き残る道はないのではないか。筆者の言うとおり「約束の時間だから」という近視眼ではない,大所高所に立った判断を望みたい。

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コメント

税制については、キビシイ感じがしています。今回の大学の偉い方が ⇒企業の減税にパワー全開の状態ですので。その足らない分を、他から~証券税制とか、もしかしたら消費税もやるかも。
まあこの爺さんが、自分が株式投資をしていない感じなんで ⇒関係ないわ~ 痛くも痒くもないし~こんな気持ちでやっている雰囲気ですが。
ただ企業の減税には、メッチャやたらとリキが入っているんで ⇒逆に企業優先をしすぎ の声がでてきたら、土俵中央での睨み合いになりそうです。

投稿: 吉田 司 | 2006年11月15日 (水) 22時54分

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