« いったい現実を把握している者はいるのだろうか? | トップページ | 冗談は市場の外で言ってくれ »

2006年10月31日 (火)

ウチ目均考(18)下品なポピュリズムに市場を殺されてたまるか

☆ 日本経済新聞第43392号(2006年10月31日火曜日)第19面(投資・財務2)コラム「一目均衡」=税収減招く株課税強化=

☆ この記事は全投資家必見であり,これを読んで腹が立った人は民主党や菅直人氏に直接講義のメールを送ることを推奨する。こう書くからには,あたしも今晩メールします。要点は,前田昌孝編集委員が書いている第一段落が全てであるので,以下に引用する。

> 民主党の菅直人代表代行が29日のテレビ番組で株式の譲渡益に対する税制について「20%,場合によっては30%くらいに上げるべきだ」と述べた。課税強化を同党の格差是正施策の柱にするというが,何か勘違いをしているのではないだろうか。

☆ 勘違いも何もない。煽り厨房 菅直人お得意の弱者救済ポピュリズム宣伝に他ならない。ところが猫撫で声の前田が書いているように,これは,たった今まで我々が構造不況やデフレやリストラといった言葉で苦しめられ苛(いじ)められてきたことを,無反省にも繰り返すということに他ならないのだ。投資家は絶対にこの手の偽善に騙されてはいけない。市場の崩壊,ひいては日本経済の最終的な崩壊につながりかねないこの手の偽善には覚悟をもって徹底的に戦わなければ,我々だけでなく,我々の子供やその子供の世代にも禍根を残すことになるだろう。

☆ 改めて煽り厨房菅直人に問い質したいことがある。政治とは何か?国家における政治とは,人種・民族を始めとする雑多な人間集団の中で発生する利害を調整することにあるのだろうか。それは国家における政治の十分条件であるが,必要条件ではない。国家における政治の必要条件とは,その国家を国家たらしめるもの(領土であり,主権である)を明確にし,近隣国家を始めとする国際社会の中で自らの位置づけを明確にすることにある。これを民族単位に弾き直すと「民族自決の原則」となるが,アメリカ合衆国のような多民族国家にあっては,民族や人種という集団では社会契約が利益相反(トレード・オフ)する場面が頻出する。いわく人種差別であり,民族コミュニティ間の対立である。多民族国家における政治とはこうした自己撞着を超えた政治的(国家的,ただし自律的でなければならず,他の民族・国家への侵害はもってのほかである)正義のあり方を示すものであるべきだ。

☆ 日本という国家は,かなり多くの部分を日本民族が占めている構成になっているため,こうした多民族国家的な「政治的正義」が二の次にされ,政治といえば社会集団間の利害の調整に終始してしまう傾向がある。その際,おかしなことに例えば今回の徴税のような本来国家が持つべき機能に対してまで利害調整の考え方で議論を封殺するような傾向があることだ。今回は,この点について前田の論旨を追いながら徹底的に検証したい。

(以下「一目均衡」=税収減招く株課税強化=から引用)
> 株式の譲渡益課税は長年,大口・反復売買の場合(注:年間50回もしくは30万株と記憶)を除いて非課税だった。1989年4月から消費税を導入することになり,財務省(当時大蔵省)が「株式譲渡益が非課税なのは金持ち優遇でおかしい」と主張,証券界の反対を押し切った。

☆ この部分からして,投資家はばくち打ちのように扱われていたのだ。それだけでも屈辱に耐えない話だが,ここで明らかにすべきことは「株式譲渡益に課税するということが,政治的にどういう意味を持っているのか」という論点が抜けたまま,なし崩し的に決められたことは,本来的な徴税原則に対して不当なものではないかという問題点である。この部分に拘らなければ菅直人だろうが国税庁の役人だろうが,誰でも自分の論を正論と称するだろう。

> それまで投資家は株式の売却時に,有価証券取引税として売却代金の0.55%を徴収されていた。89年4月以降は有取税が0.3%になる一方,売却代金の1%を「みなし譲渡益課税」として天引きされることとなった。

> 天引きが困る人は税率26%(注:国税20+地方税6%と記憶)の申告分離課税を選択できたが,個人投資家の大半は面倒な申告を嫌った。要するに株式売却時の税率が0.55%から1.3%になったわけだ。

☆ いやそれだけではない。売買手数料の3%(のち5%)を消費税として召し上げられているし,配当金にも源泉(あるいは申告)課税がかかっていた。有り体に言えば,投資家は剥ぎ取られるだけ剥ぎ取られていたのだ。こんなバカを見たのは投資家とドライバーだけである。ちなみに「みなし譲渡益課税」の根拠は値上がり益5%と見て,その20%を課税したと言われているが,計算するまでもなく,それはまやかしである(分からない人は100万円で買った銘柄が120円に値上がりした時に売った場合の税額を考えればいい。差額20万円の5%は1万円だが,税額は1.2万円だ)。

> そして89年末に日経平均は史上最高の3万8,915円を付け,翌年からつるべ落としに下げた。税収の当ても外れた。「みなし譲渡益課税」の税収は89年度の6,044億円から98年度の1,012億円まで減少した。申告分離課税を選んだ人からの税収も,89年度の345億円から98年度は177億円に減少した。

> 90年代は地価や株価が下がり,富裕層の資産も目減りしただろうが,これを「格差是正が進んで良かった」と喜んでいる人はまずいない。資産価格の下落は深刻なバランスシート不況を招き,悪循環はさまざまなルートを通じて非富裕層にまで幅広く及んだ。

☆ その通り。年金運用は年率5%なんて株式運用益が無い限り絶対に達成できない水準にあったものを肝心の株価が崩壊して,代行返上の嵐や日本版401kの半強制的な導入につながった。リストラが社会問題化したのは,今は消費者金融だが,その前には商工ローン禍があった。企業は耐えきれず倒れるか犯罪に走り崩壊し,そのしわ寄せが30代の無就業者と目下大卒予定者の雇用合戦というあからさまな構図を示している。これらが資産バブル崩壊とその後のモラルハザード(住専問題時のマスコミと大手金融機関,そしてなにより国会の対応)が全ての引き金を引いたことを15年に亘る塗炭の苦しみから学習したのではなかったのか?

☆ 米国がその時期に繁栄したのは,アラン・グリーンスパンが超人だったからとでもいいたいのか?FRBは1990年代の日本の失敗をつぶさに観察して,市場との対話,市場への意思表示を通じた連続的な激変緩和というリスクコントロールを行ってきただけのことだ。日本の現状(少子化,格差社会)などは資産バブルを感情論で一気に潰したことで,着地すべき縮小点を見失い,限りない縮小均衡の無間地獄(デフレスパイラル)のとば口に立たされたことが何よりの理由ではないか。何が面白くて,また同じ道を辿るというのか?菅直人に政治家としての思想も力量もないことはこれで良く分かった。

> 民主党案に沿って現行の10%の税率を急激に引き上げれば,個人投資家が駆け込みで株式を売るだろう。企業買収ファンドに買いの好機を提供するようなものだ。企業経営者はじっくり経営に取り組む余裕を失い,日々株主対策に奔走しなければならなくなる。

☆ 異論なし。

> 税率は低い方が税収は上がる。例えば上場株式の配当に対する源泉徴収税率は2003年4月に20%から10%に引き下げられた。株価に左右されやすい譲渡益課税と違い,毎年1兆円前後の税収があるため,税率を半分にする影響は大きいと想像された。

> ところがふたを開けてみると,上場企業が積極的に増・復配をした。06年3月期には三月期決算東証上場銘柄の配当金総額が4兆8,959億円となった。03年3月期の2兆4,934億円から倍増し,税収の落ち込みを完全に埋めた。

☆ 当然だろう。配当金の高い企業への投資を促進する投資信託が登場し,株式投資を直接しなかった広い層に広範に受け入れられた。つまり菅直人の頭の中にある小手川君のような個人投資家はあくまでも少数であり,いまや投資信託経由で株式投資を始める個人はかつての昭和30年代以上の範囲・規模に広がっているのである。菅直人のようなことをそこですれば絵に描いたような「角を矯めて牛を殺す」結果になるだろう。今必要なのは市場の規律と利益の還元のルールを意識したファイナンシャル・リテラシーであり,それを前提にした「市場の”楽市楽座”」なのではないか。そういう国や国民のあり方を語り道筋を立てるべく自ら範を示すのが国政政治家たるもののあるべき姿ではないのか?

> 「貯蓄から投資へ」は始まったばかりだ。民主党案では,団塊の世代が3年間で受け取る退職金約50兆円が株式市場に流れてくる期待は持てない。国際的な金融センターの役割も,低廉な印紙税を納めるだけで譲渡益が非課税の中国に取って代わられるだろう。

☆ その通り。そんな国にもはや要はない。ここまで投資家を蔑ろにし,差別し,バカにする国に税金をまともに納めないという者が続出したら菅直人は自分の発言の責任をどう取るのか?改めてお尋ねしたいところだが,そんなことになればあたしも「永遠の旅行者」の一人になる道を選ぶかもしれない。

☆ そして菅直人の論理を言い換えれば,株式投資なんかしている者はこの日本では少数であり,そういう人間の所得を犠牲にしても格差是正には何の問題もないということになる。今までの経緯を見て,いったい誰が一番重税感を持たされているのか?まして,投資がリターンしかないような一面的な物言いがいかに国家正義に反するものであるか,理解できたのではないだろうか。今,こうした目先の人気取りや目先の税金取りしか頭にない連中と徹底的に戦っておかないと,後で取り返しの付かないことになるだろう。ウエブログで抗議や反対の意思表示をするだけでもいい。一人でも多くの投資家がこの政策の不当性を広く訴えていくことを希望したい。

|

« いったい現実を把握している者はいるのだろうか? | トップページ | 冗談は市場の外で言ってくれ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« いったい現実を把握している者はいるのだろうか? | トップページ | 冗談は市場の外で言ってくれ »