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2006年9月28日 (木)

同和鉱業の株主安定化策と平等原則 感想

☆ これはアメブロのassetmentさんのブログからリンク元を辿ったもの。ビジネス法務の部屋というブログの9月3日号に掲載されている。ブログ内容は,企業法務の実務化向けの内容であるが,この問題は株式投資とも係わりがあるので読みながら考察してみたい。

☆ 日本経済新聞第43352号(2006年9月20日水曜日)第17面(投資・財務2面)に,この「問題」を特集したインタビュー記事がある。(聞き手:横山雄太郎)インタビューの対象は二人で,ひとりは同和鉱業の吉川広和社長,もうひとりは西村ときわ法律事務所の山口勝之弁護士。導入を決めた発行会社の代表取締役とスキームを考えた法律事務所の実務家という組み合わせは興味深い。

☆ 山口(勝)弁護士によるスキームの説明は以下の通り。
(1) 過去3年間,株式を長期保有したから新株予約権を無償割り当てするというわけではなく,9月30日時点の株主に株式数に応じて同じ内容の新株予約権を無償割り当てし,長期保有した株主だけが新株予約権を行使できるスキームだ。
(2) これ(注:平成18年9月30日=権利確定時期としては9月25日)以前に株を買う権利は平等で,それ以後に長期に持つかどうかの判断権も平等に与えられている。希薄化は限られ,無償割り当てを受けた株主もそうでない株主も,不利益を蒙る恐れはない。

☆ 早速,山口利昭法律事務所のウエブログ「ビジネス法務の部屋」(2006年9月3日(日))を読む。まず議論のスタートとして山口利昭(以下「山口(利)」)先生はこう始める。

> 同和鉱業(株)が、3年間継続して株式を保有した株主に行使を認める条件付きの新株予約権(保有株式1株につき0.05株)を11月に無償割当されるそうです。「株主還元策」ということですが、実質的には「株主安定策による敵対的買収防衛策」といった意味合いが強いのかもしれません。いろいろなブログを拝見しましても、また株価動向を見ましても、株主還元策としては画期的であり注目に値する、とのこと。持株会社制への移行の時期とも合わせた公表タイミングもあって、比較的評判がいいみたいです。
> そもそも「3年間保有した株主だけに行使を認める」という行使条件付きの新株予約権の無償割当というのは、株主平等原則に反することにはならないのでしょうか。
> 会社法では109条で平等原則が規定されておりますが

=【参考】会社法第109条(株主の平等)
第1項 株式会社は,株主を,その有する株式の内容及び数に応じて,平等に取り扱わなければならない。
第2項 前項の規定にかかわらず,公開会社でない株式会社は,第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項については,株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
第3項 前項の規定による定款の定めがある場合には,同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる株式とみなして,この編及び第五編の規定を適用する。=

> 企業の資金調達の多様性を重視する立場から、あまり平等原則を厳格に考えることはせずに、合理的な範囲での取り扱い上の差別化は許容範囲にある、とみる見解が通説的だと思われます。

> ただ、なにが不合理な取扱に該当するか、といいますと、たとえば支配株主が多数決原理を濫用して、少数株主に不利益を与えるような取扱などは、許容されない平等原則(つまり平等原則違反としての不公正発行)に該当する可能性があるようですね。

> このあたりは昨日発売されました江頭憲治郎教授の「株式会社法」124頁から126頁あたりでも、「株主平等の原則とその限界」「株主の義務-誠実義務」あたりで少し論じられているところであります。

☆ この指摘に対して,制度設計者である西村ときわ法律事務所の山口勝之(以下「山口(勝)」)弁護士は前記日本経済新聞のインタビューの回答としてこのように回答する。

>「過去3年間,株式を長期保有したから新株予約権を無償割り当てするというわけではなく,9月30日現在の株主に株式数に応じて同じ内容の新株予約権を無償割り当てし,長期保有した株主だけが新株予約権を行使するスキームだ。これ以前に株を買う権利は平等で,それ以後に長期に持つかどうかの判断権も平等に与えられている。希薄化は限られ,無償割り当てを受けた株主もそうでない株主も,不利益を被るおそれはない」

☆ 山口(勝)先生の回答は(はは。。。同姓だからメンドーだな^^;),山口(利)先生の指摘を意識した質問に対するものだけあって論旨明快だ。ただひとつ引っ掛かることもある。平等を論じる対象となる株主についての理解に行き違いがあるのではないか?

☆ 制度設計した山口(勝)先生は,あくまでも本件(株主に対する新株予約権の無償割り当て)そのものを基準とし,対象となる株主の確定日(9月25日)からほぼ1ヶ月の「通知期間」を設けているから,その間に同社の株主になって新株予約権無償割り当ての対象となるかならないかは,各投資家の「自由だ!」なのであるから(笑)株主平等原則には触れていないという見解なのだろう。これに対して問題提起した山口(利)先生は,「基準日」ともいえる9月30日に株主だった人とそうでなかった人(後から株主になった人)との間の平等を問うている気がする。

☆ このように3年間保有したから新株予約権が発生するということの是非を問うている山口(利)先生と保有の前提となる「基準日」に株主であるかないかについては事前に「公告」しているのだから平等に反しないという山口(勝)先生との認識は,最初からすれ違いの感がある。ところで株主とは投資家でもあるから,投資家という「現金な存在」の立場からは,こんな疑問もある。3年間保有したことをどうやって証明するのか?

☆ この間の抜けた質問への回答は「それは実質株主名簿を見る以外事実上方法がない」ということになるのは百も承知だ。要するに自分の手元に名義書換を済ませた株券を持っておく人やそれを証券金融に持ち込んだり,信用の担保にする人のことは両先生とも考えてはいないだろうということ。勿論,証券金融会社や証券会社がカタに取った株券を名義書換し(保管振替機構の自社名義口座に入れ)た瞬間に,元の持ち主の権利は消滅する筈である。。。が,名変はともかく実質株主の場合,実務上それが確定するのは次の期末(基準日)ということになる。

☆ 我々でも優待取りでよくやるのだが,権利が確定した翌日に持株を売って(信用では売らない。この期間の逆日歩が結構な金額になることは寅年の獅子座マーケットコメントにもあるけど^^;)また次の権利確定日以前に同株数以上買い戻したらどうなるのか?こんなセコイことを法曹家は考えないだろうが,投資家とはそこまで考える種族なのである(苦笑)。

☆ しかしそんな門外漢のおバカな疑問と関係なく,山口(利)先生の考察は続く。

> そもそも会社法は法定保有期間要件(差止請求権を行使できる株主の保有期間要件など)を個別に規定して、その平等原則の例外を定めているのでありますから、法定されていない場合の持株数に比例しない株主の権利の差別化は認められない、といった理屈も成り立つのかもしれません。

> もう少し実質的に考えてみますと、保有期間3年で新株予約権を行使できる、という条件で毎年一回、同じ比率で割当を続行するとして、全株式の半分に該当する株式は流動性があり、半分は支配株主がそのまま保有した場合には、10年後には支配株主は約58%の株式を支配できることになり、20年後には約68%を保有できることになります。

☆ この議論は,山口(勝)先生に対するインタビューでは触れられていない。あくまでも投資・財務面からの考察であるから仕方がない訳だが,企業法務の実務として考えた場合には興味深い。投資家は上に書いたように,自分の都合で長期保有をあっさり短期で売ってしまう(昨日のあたしもそれ^^;)。また買い戻すからいいさなどとお気楽に考えているが,実際にはこれがなかなか難しい。昨日書いたおばちゃん投資家ではないが,投資家ほど目移りの激しい浮気者も少なくないからだ。しかし,これが政策投資先だったり持ち合い株主だったり親会社だったらどうなるか?

☆ 彼等には株式を売却するというインセンティブは働かないのだから,保有期間が長くなるほど新株予約権無償割り当ての対象は増加し,それを行使しない手もないだろうから,それが続く限りそれこそ「転がる雪だるま」状に保有株数は膨れ上がっていくことになる。

> たしかに、どの株主でも3年間保有すれば新株予約権を行使することができるわけですから、経済的な利益という面では平等に取り扱われている気もしますが、会社を支配しうる株主とそうでない少数株主とでは支配利益という意味でいえば長期保有へのインセンティブには大きな違いがあるわけでして(そもそも1億円ほどの株式を保有している場合でも、3年度に同じ株価であっても500万円分ですから、これが短期売買を目的とした人たちに長期保有を勧めるだけの動機付けになるのでしょうか。

☆ そう考えると山口(利)先生のこの指摘は全面的に正しい。だが,山口(利)先生は続けてこうも書く。

> やはり会社支配の意欲が上乗せされていなければそうそう長期保有を決定付ける理由にはならないようにも思えますが)、そうであるならば(これが一回かぎりのお祭り行事ということでしたら別でありますが)この無償割当は少なくとも支配株主による資本多数決濫用のおそれのある制度ではないかな・・・・・とも思ったりします。

☆ ここがポイントだと思う。同和鉱業が今回実施したのは「一回かぎりのお祭り行事」なのか否か。どうもそうじゃないのかなという感じがするのだ。というのは,山口(勝)先生はこうも答えているからだ。

>「新株予約権の行使で大量の1株未満の端数が出て,株をもらえる株主と,そうでない株主がいるといった不平等が生じるのが心配だった。そこで端数は現金処理で対応し,株自体は手にできない株主でも端数に見合う現金を受け取れるようにして財産的価値の点で平等になるようにした。」

☆ このニュアンスからは継続的な実施の気配はあまり感じない。また,山口(勝)先生と同じ記事のインタビューに答えた同和鉱業吉川広和社長はこのように指摘している。

>「当社を長期間支援してくれる応援団を確保するのが狙いで,配当とは意味合いが違う。最終製品を作っていないので株主優待もやりにくい。何か新しいことをやってみたいという気持ちもあった。」
(買収防衛策ではないのかという質問に対して)
>「個人株主や安定株主が増え,結果的に防衛効果が出ることは経営者として期待しないわけではない。ただこのスキームを防衛目的に使うのなら3年保有で5%程度の還元ではなく,5年保有で20%還元にするといった方が効果的だ。いずれそういう使い方をする企業が出てくるだろう。」

☆ うーん。ここはホンネが出てるなと思う。また「5年保有で20%還元」というスキームは,山口(利)先生の発言を借りれば「たとえば支配株主が多数決原理を濫用して、少数株主に不利益を与えるような取扱などは、許容されない平等原則(つまり平等原則違反としての不公正発行)に該当する可能性があるようですね」という感じがする。

☆ 最後に「株主優待制度」についての指摘を。まず,山口(利)先生。

> 株主優待制度というものは、あくまでも株主への経済的利益の平等配分の是非が問題となっている点で、また同じく株主還元策といわれている「自社株買い」というのは、あくまでも法令で認められている制度を利用したものである点で、こういった長期保有株主だけに株式を付与する制度とは異なるもののように思いますが、いかがでしょうかね。

☆ これに対する山口(勝)先生の意見。
(単純に株主優待にしなかったわけは)
>「優待制度は多くの企業が導入しているが,会社法上許される範囲に限界があるのではないか。優待を定める法律はないが,あえて解釈するなら(注:今回の新株予約権無償割り当ては)現物配当の一種。配当ならば株主総会の決議が必要で(注:旧商法と思われるが?)持ち株数と正比例しなければならない。一般的な株主優待は必ずしもそうなっていない。保有期間に応じて異なる内容の配当をすることも会社法上禁止されている。」

☆ うーん。最後まですれ違った議論と感じるのは,あたしだけ?

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店頭に行ってきました

☆ 昨日,午後から休みを貰ってポジションの整理のために久しぶりに証券会社の店頭に行った。今はネットトレーダー全盛で,店頭には,お馴染みのやや高齢化が進んだ相場名人おばちゃんといった店頭な人々が顔を揃えていたくらいなもので,実に静かなものだった。店頭は静かだった。。。さり気なく書いたが,昨日の上昇本質は案外にこんなところにあったのではないかと思っている。出来高をみても不足感があるし,何より先物押し倒して強引に持っていった(その途中で帰ったのだが(;´▽`A``)大引けにかけての動きが自ずから語っているような感じがする。(まあこれは昨日の上昇相場に売りをぶつけた人間の繰り言であります(^▽^;))

☆ 相変わらずおばちゃん投資家は同じようなことばかり叫んでいた。昨日の相場だったら,鶏インフルエンザで盛り上がっていた富山化学とかね。。。バフェットの言うミズ・マーケット地で行くような活躍ぶりだったσ(^_^;)。こういう人を見ていると思うのだが,絶対に成り行きをしない。毎日店頭に来ている(んだろうが。。。)投機家だったら,投機をすべきなんじゃないかと思う。投資だったら別に毎日店頭に来る必要はない必要な時にもしくはそこでしか買えないという制約の中でも,買うべきものを買うのが投資であり,売るべきものを売るのが投資という。

☆ 一日の相場の中で材料を見つけては,それに右往左往されることなく売り買即断していくのが投機である。投機である以上,外れたと思ったら同じけの速さをもってポジション閉じなくてはならない。それが出来ないのなら投機なんかやってはいけない。そしてそのどちらも出来ないから,おばちゃんや相場名人は毎日,証券会社の店頭にやってくるのである。

☆ もうひとつ分ったこと。かつてあれだけ威力を誇っていた「選択テレビ」が時代遅れになりつつあること。ハッキリ書くとCSKマーケット・ビューアに明らかに劣後している。あれがあれば十分だから,店頭行かなくても発注には何の苦労もない。そしてCSKマーケット・ビューアだったら大手証券取引出来れば(=口座さえ開ければ)誰でも見ることができる。なるほど,店頭に行く人などいなくなるわけである。

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2006年9月26日 (火)

続・不適合営業おばちゃん=2=

☆ 前回の終わりに書いたように,おばちゃんの営業姿勢はGNN(義理と人情と浪花節)だから,要はかつて自分を可愛がってくれたな意味じゃなくて。。。たぶん^^;)偉い人のツテを辿って営業が続いていく。これはこれで何か問題がある訳ではないが,個人相手の営業ならともかく法人相手にこれをやられるから,財務部門はたまったものではない。何しろ営業マンが十分に説明できない商品の購入稟議書を書いて説明して回るのだから,おばちゃんの顔を見るのも嫌だと言われればそりゃそうだろうなと納得できるのである。

☆ さて,前回の成功に気をよくしたおばちゃんと上司の部長は,似たような商品を持ち込んでは成約させていた。商品設計は前回話した通りだが,売り込む時期が違うから,為替レートは若干円安になっていた。これも成功。その次は豪ドルである。。。?

☆ おばちゃん達が豪ドル仕組み債を持ち込んだのは,去年も押し詰まった時期だった。これも結果論だけ言えば,現段階ではセーフである。ただ資源国の通貨を利率設定の条件通貨に使ったあたりから注意すべきだったのかもしれない。基本的にこういう商品設計の場合,為替は流通量も多い米ドル以外は好ましくない。米ドルだって本質的な問題を抱えているのだが,強い米ドルは米国の国益といつまで言ってくれるか(もちろん半分以上はタテマエだが)によって,その成果は変わってくるだろう。

☆ 前置きが長くなったが,おばちゃんチームが持ち込んだ㌧でもない商品を紹介する。

(2)リバース・フローター債(スノーボール&ターゲット・リデンプションタイプ,レバレッジ型,後決めクーポン)20年債

☆ 見るからに金融工学っぽいでしょ(爆)。例によってこの商品の特徴を先に書くと。。。

リバース・フローターインバース・フローターとも言う。普通,債券金利は,全体の金利水準(FFレートとか短期金融誘導目標などの短期物から10年国債利率のような長期物まで)が上昇すれば,それにつれて上昇する。最初から利率が決まってしまっている既発の債券価格は下落し,利回り水準が同一になるようになる。ところがどっこい。リバース・フローターはこの常識の逆を行く。あとで算定式を見れば「なんだそうか」と思うだろうが,この商品は,とにかく金利水準上昇すると,商品の利率下がってしまうのだ!

スノーボール雪だるま。別に債券の形がまん丸な訳じゃない(^▽^;)。これも算定式を見たら分かるが,雪だるまが転がと周囲の巻き込んで大きくなる。だからスノーボールという名前が付いている?!

ターゲット・リデンプション : ここに来て,ようやく前回見た単語が出てくる。ターゲット・リデンプションとは,この商品から得られた利金合計額が一定の限度ターゲット)に達したら,そこで元本強制的償還リデンプション)されるということ。

レバレッジ型 : レバレッジはご存じのように「梃子(てこ)のこと。レバレッジを利かせるという言葉があるように,小額の投資で大きな効果利益なら良いが損失もあり得る^^;)を得るやり方である。恐ろしいことに,あたしが読んでみた商品のパンフレットからは,どこにどういうふうにレバレッジがかかっているのか,全く理解できなかった

後決めクーポン : クーポンは「利札」。この場合は利率のこと。この商品の利率の決定日は,各利払い日の10営業日前であるから,商品購入時点では利率が決まっていないことを「後決めクーポン」と言っている。

☆ という訳で,商品の特徴のすべてがアヤシイ。いちばん最初に引っ掛かるのは,リバース(インバース)フローターである。この商品が持ち込まれた今年の春先日銀は既に量的緩和政策止めた。実際にそのあと利上げ(=ゼロ金利解除)を行ったのだから,こんな時期にリバース・フローターオプションがついた「債券もどき」なんぞ買えば,自分から「我が輩はカモである」と名乗り出るようなものだろう。当時の雰囲気は「量的緩和の解除は既定コース。ゼロ金利解除の利上げは早晩避けられない」だった。ただし「ゼロ金利解除後の金融政策」については「時間をかけて慎重にやってくれ」という大合唱(別名「政治的圧力」)があったのも事実。イチかバチかでこれを買うというのなら,ゼロ金利解除後の短期市場緩慢に上昇し,利金の総額がターゲットに届くという読が必要になる。そういったことも含め,この商品がどう設計されているかを書いてみる。

1.通貨:ユーロ円
2.発行日:平成18年某月某日
3.利率:当初1年間   6.00%
     その後19年間 前回クーポン+1.05%-2×6ヶ月円LIBOR
     (利率は0.00%以上=マイナス金利なし=)
  ※LIBOR=London Inter Bank Offered Rate(ロンドン銀行間取引金利
   ちなみに昨日の夕方に見た6ヶ月円LIBOR0.4835%だった。

  ※スノーボール=前回クーポンにプラスされる1.05%の部分
  ※リバース・フローター=上の式を見れば分かるように,6ヶ月円LIBOR上昇すればするほど,この債券「らしきモノ」利率下がってしまう。これがリバース・フローター(インバース・フローター)の正体なのだ!(と強調するほど高度でもないか^^;)
4.利払日:発行日の翌日(受渡日)起算で6ヶ月後から
      利息期間計算方法=30/360(1年360日,ひと月30日で計算)
      分かりにくいから例えば受渡日が5月N日だったとすると,初回の利払日は11月N日で,2回目は翌年5月N日となる。
5.ターゲット・リデンプション条項利金合計額額面の12.00%に達した時点で(その利払日をもって)強制的に償還となる。実はこれが最大の曲者だった。

額面(元本)1億円のこの商品を持っていたらどうなるか?具体的にシミュレーションをしてみる。

(1)購入時点  平成18年 5月N日 : 元本100,000,000円(以下略)
(2)初回利払い 平成18年11月N日 : 
         金利(初年度=6.00%,また経過日数は,30×6/360)
         ∴100,000,000×0.06×180/360=3,000,000円
(3)2回目   平成19年 5月N日 :
         金利(初年度=6.00%,経過日数 180/360)
         ∴100,000,000×0.06×180/360=3,000,000円

と,ここまではすこぶる順調である。ターゲットの半分を1年で稼ぎ出した。。。もちろんそれは「ぬか喜び」に過ぎないのだが。

(4)3回目   平成19年11月N日 : 金利計算式前提条件を以下の通りとする。
   ※利率決定日利払い日の10営業日前ロンドン時間午前11時6ヶ月円LIBORが,仮に今より約1%高い1.50%だったとしたら。。。
(計算式)前回クーポン+1.05%-2×6ヶ月円LIBOR なので,この商品の金利(クーポン)は
          6.00+1.05-2×1.50=4.05%となり,
         ∴100,000,000×0.0405×180/360=2,025,000円
ということになる。

(5)4回目   平成20年 5月N日 : 金利計算式の前提条件を大負けに負けて(爆)前回同様としても,
(計算式)前回クーポン+1.05%-2×6ヶ月円LIBOR なので,この商品の金利は
          4.05+1.05-2×1.50=2.10%となり,

         ∴100,000,000×0.0210×180/360=1,050,000円ということになる。

☆さて,以上よりここまで2年間の金利総額は9,075,000円となるが,1年目から2年目にかけての劇的な金利の落ち方を見た時,ターゲットである金利合計12,000,000円は,いかにも「遠すぎた橋」であることがおぼろげながら理解できるのではないか。もちろん望ましいのは,今から13ヶ月ほど先の短期金利水準6ヶ月円LIBOR)が現在約0.5%水準から出来る限り上昇していないことであるが「そんな先のことは誰にも分からない」。これがリバース(インバース)・フローター債恐ろしさである。

インバース・フローターなんてオプションは,本来「これから先の金利が下がりそうだが,いつ下がるか分からない」状況の時に威力発揮するはずだ。どう考えても「これから金利も上がりそうなんですが,目先はしっかり利が稼げますから,お買いになりませんか」なんて商品ではない!これが適合性の原則反していないというのなら,この国のデリバティブ営業は,文字通り「何でもあり」ということになる。

☆ 自分が売り込む商品の内容判らずに売る方も売る方だが,手数料稼ぎなのか自分の管轄営業チームの点数獲得なのか知らないが,こんな内容の商品をGNNで持ってくる証券会社の上司が一番の問題だ。まさに両名とも「適合性の原則」についてどう考えているのか小一時間問い詰めたい。また,少し新聞やテレビを見れば分かりそうな金融政策の環境下に,どういう儲けを狙ったのか知らないが,こんなクズ商品組成して持ってきた外資(おばちゃんの証券会社の卸元)には,良識を疑うというに「入り」で良いんじゃないかと思う。

☆ ちなみに,この商品。仮にフロートの結果,金利がいったんゼロに落ちてしまった場合,再び金利がつくための条件を計算することも可能だ。

(算式)前回クーポン0.00%だから,0.00+1.05%-2×6ヶ月円LIBOR = 0.00
         ∴6ヶ月円LIBOR = 1.05 ÷ 2 =0.525% これよりLIBORが低くないと金利がつかない!

☆ 結果的には,いったん計算式のクーポンゼロになってしまったら,現在利水準にほど近いところまでLIBORが下がらないと,満期までもう二度と利息は手に出来ないことになる。このことが,いかに発行者に有利な商品であるかここまで説明したら分からない人はいないだろう。なんともまあ,詐欺的な商品だ。ただし諸勢力がロシア人の柔道家かグレイシー一族の如く日銀4年ほど体固めにし続けるならば,逆転勝利がない訳でもない。それにしても。。。。。こんなものいらない!

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2006年9月25日 (月)

落魄

☆ 正直に言って,この人物について今ごろ何を言えばいいのか良く分からない。ただハッキリしていることは「投資ジャーナル」というテレビCMまで派手にやっていた投資会社(という名の大規模詐欺)の主役がこの人物であること,出所後も何度となく仕手筋との係わりが噂されたものの,逆にさる筋の追い込みにあって生死不明だとか死亡したなんていう説も何回も見たということ。。。そんなところである。他にもあるが絶対に書かない。

☆ 衆人環視の中で斬殺(惨殺でもある)された豊田商事の永野一男ほど悲惨ではなかったが,だからといってその落魄に差があるとも思えない。今日の所はそれ以外に適当な言葉が思いつかない。。。そしてそうした屍(失礼な言い方をお許しいただきたい)を乗り越えて今日も明日も非情に続いていくのが相場というものだと思う。


<放火未遂>自宅に灯油まく、元投資会社会長逮捕 滋賀


 滋賀県警近江八幡署は22日午後1時15分ごろ、同県近江八幡市、元投資顧問会社会長、中江滋樹容疑者(52)が自宅1階に灯油をまき、火を付けたとして、非現住建造物等放火未遂容疑で現行犯逮捕した。中江容疑者は85年、投資家から約18億円を詐取した詐欺容疑で逮捕され、89年に懲役6年が確定、服役した。
(毎日新聞) - 9月22日22時26分更新


中江滋樹 トンデモない近況


ゲンダイネット
http://gendai.net/?m=view&c=010&no=18347

 85年に巨額詐欺で逮捕された「投資ジャーナル」の中江滋樹(52)をご記憶か。今のホリエモン並みに世間を騒がせた「兜町の風雲児」が20年の歳月を経て、意外な事件で再び現れた。投資絡みではなく、放火未遂で捕まった。当時も靴のかかとを踏みつぶして歩く姿が話題を呼んだが、逮捕後は海外逃亡、精神科入院など流浪の生活。3年前から滋賀の近江八幡の実家で「オウムの麻原彰晃そっくり」の汚さと犬のフン投げなどの奇行で近所では評判だったという。

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続・不適合営業おばちゃん=1=

☆ 先日(って相当前だが^^;)一度紹介した「不適合営業おばちゃん」。その御仁が持ち込んだ商品の設計が分かったので,ここで紹介したい(爆)。

(1)フロア&キャップ付 ターゲット・リデンプション型 為替連動債

フロアとは下限金利キャップとは上限金利のこと。
ターゲット・リデンプション型とは,金利の総額一定水準達したら強制的償還されるということ。
為替連動債とはある一定の日為替レートによって,その日が属している期間利率決まる債券という意味。

☆ 要するにこいつはストラクチャード・ボンド仕組み債)であり,債券の皮を被ったデリバティブ合成モノがその正体なのである。もう少しその商品設計を見てみると,こうなる。

① 発行日 2005年某月某日(償還日は何とその30年後!>_<)
② 通貨 ユーロ円(いちおう円建てなので,為替差損の可能性は形式上消える^^;)
③ 利率 当初1年間 3.00%
      その後29年間 金利上限3.00%~下限0.10%
④ 利息計算式 1.00%×(S-設定為替) !

※これだけでは何のことだか理解できないでしょうから,一つずつ解いてみると。。。
A)設定為替101.20円(ちなみにこの時の直近為替レート107円台なので,そこから6円下駄履き(見かけ上足切りだが^^;)となっている。この下駄バッファとして機能するかしないかがこの商品の勝負ポイントでもある(^^;)。

B)利決め日の為替レート。正確には次のようになる。○ 各利払い日10営業日前のロイターJPNU,午後3時の円/USDミッドレート
※わあ格好良いのキタ━━━(゚∀゚)━━━!!! じゃあなくって,これは簡単に言うと
利払い日10営業日=土日休日を除く=の日。午後3時現在でロイター発表しているドル円外為取引の仲値(ミッドレート)」のこと。一番近いイメージはちょうどその放送されているNHK定時ニュース最後に出てくる「東京外国為替市場1ドルなんたら円何銭からなんたら円何銭」の真ん中(足して2で割る)の値。。。のようなもの。

☆ ということは,式を見れば分かるが,1.00%×(S-101.20) だから,(=ドル円レート)が101円30銭よりも円高になれば1.00×(101.30-101.20)=0.10%フロア下限金利)に達するので,これ以上利率は下がらない。逆に104.20円以上の円安の場合は1.00×(104.20-101.20)=3.00%となり,キャップ上限金利)となる。ちなみには間違いなく104円20銭よりも円安なので,このままだったらずうっと3%の金利収入が入ることになる。。。。。

☆ この仕組み債は「ターゲット・リデンプション型」である。リデンプション(Redemption)とはつぐない(♪テレサ・テン^^;)とか償還という意味で,金利の合計元本(額面)に対して一定の割合(金額)に達したらそこで(利払いと同時に)償還となるように設計されている。設計を見ると受取利息の合計額面の9%になったら償還とあるから,このまま為替相場利決め日に一度も仲値104円20銭を下回らなければ3年後には無事償還おめでとう!ということになる仕組である。

☆ 発行者にとってこの仕組み債のメリットは何だろう?最短で3年満期クーポン(利率)3.0%の単利の債券を発行したようなモノであるが,為替次第満期ズルズル延びるというのが可能性としては考えられる。しかし,それ単独で何のメリットがあるのかは良く分からない。言い換えれば何か他の商品とペアになっていて,その商品で取っているポジションヘッジするために使えるオプションをいじって加工したのがこれじゃないかという気がする。

☆ 非常に悪いけど,おばちゃんにこの商品の説明ができたとはとても思えない。せいぜい最初は3%も利率がありますから程度の話しかできなかったんじゃないのか?GNN(義理と人情と浪花節=野村證券の小タブの造語)で売るには手数料も美味しそうな商品だが。。。ヽ(`Д´)ノ

☆ さて,GNNだろうが押し込み販売だろうが,まずは商品が売れればいいのであるからこの成功に気をよくしたおばちゃんとその上司は,このあとに㌧でもない商品を持ち込むことになる。
=以下続く=

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2006年9月23日 (土)

ウチ目均考(13)~砂上の楼閣WEB2.0

☆ 毒にも薬にもならないという言葉があるが,WEB2.0という概念似た売り物は,サッカリンのようなものだ。あたしは有害だと警告している。この光景は既に6年前に見て来た。同じようなことを繰り返す,まるでアナログ盤の針飛びみたいなちゃちな詐欺が何で持て囃されるのか?全く理解できない。

☆ ここは気をつけて欲しいのだが,あたしは情報技術存在そのものを否定しているのではない情報技術革命というものは確かにあった。それは,あたし達がこうやってWEB上にコミュニティを作り,小なりといえども自分の考えをキチンと発信する手段を持ったという事実があるからだ。

☆ ただそこまでは情報ツールの話である。これをいかに商業ベースに乗せるのかが,ここまでのインターネットビジネスの興隆だった。コミュニティ,つまり人間(参加者)の集積をベースに商業展開を考える。これを第一世代と呼ぶのは便宜的な分類に過ぎない。つまりツールをどのように商業ベースに乗せるのかは,商業の基本的課題であり,WEB2.0なんて名前をつける前から存在していたし,これからも存在し続けるのだ。

☆ 有り体に言えば,WEB2.0なんてのは,勿体をつけた「あかんたれ」に過ぎない。バカバカしいが,それが市場のテーマになるのであれば,をつけて構えておくべきだ。必要なのは,その技術(商業モデル)はコモデティ化しうるのか?そうなった場合にも採算性を持ちえるのか?そういった事だけだ。そうでないのなら手を出す必要もないし,好きにすればいいと思う。

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2006年9月22日 (金)

ちぃっと疲れました

コメント有難うございます。

一日リフレッシュして(仕事しますが--;)

コメントは今晩以降にお返しします。(^-^)ノ~~

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2006年9月21日 (木)

凧の糸と相場の金は出しきるな

LION&PELICAN LION&PELICAN

アーティスト:井上陽水
販売元:フォーライフミュージックエンタテインメント
発売日:2001/05/30
Amazon.co.jpで詳細を確認する

☆ 陽水が「ワカンナイ」という曲を作った時,宮沢賢治を悪し様に言う意図はなかった。陽水にとってワカンナイものは「雨ニモ負ケズ」でもそれを書いた宮沢賢治でもなく,彼(賢治)の無私の思いが伝わらないこの世の中なのである。そういえば『ライオンとペリカン』は今思うと名曲揃いで「とまどうペリカン」とか「愛されてばかりいると」(シングルヴァージョンの方が好きだけど),「リバーサイドホテル」「背中まで45分」そしてこの曲と入っている。

☆ ところであたしがワカンナイのは相場の方で,いつもいつも空気の抜け始めた風船のような展開になるのは,市場の中に弱気派がだんだん増えてきたのじゃないかという疑念を持っている。別に誰が弱気に追従しても構わないのだが(この辺りが「ポジション・トーク」ですぞ,皆様(^^;)。),弱気展開の「」は何かを考えても全くワカンナイ状況なのだ。

☆ 本当は業績相場が続いていいはずである。ただ昨年に比べて半分以下の出来高が示すように,市場参加者の意欲はどんどん減退している感じがする。中間期末を控えてということであれば,去年の状況はどう説明する?次はどれだ的な相場展開が見えなからワカンナイのである。だから。。。(タイトルに戻る)

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2006年9月20日 (水)

ここは森の中

☆ 熊さんが多過ぎて。。。

(恒例のポジショントーク)

☆ 相場の顔つきが良くないと思わないか?上げ材料を探しては突進するものの,立ち会いに変化をかまされ,あっという間の送り出し。こんな相撲ばかり毎日取っているのでは「満員御礼」には程遠いだろう。

☆ ファンダメンタルズが悪化しているのではなく,ファンダメンタルズを先取りし過ぎたから,材料消化が続くことになる。ファンダでは突破できない相場なら,いきおい材料株か仕手株の腕力相場ということになる。でも腕力相場が威力を発揮できるのは,市場参加者がオーバーナイトでも打ち込んでみようと思うような銘柄が出て来た時に限られる。

☆ ミクシィを見れば分かるように,こんな地合いで材料を担ぎ上げるのは相当難しい。日経の相場欄に出てくる業界筋だって醒めたコメントしか載せないだろう。それは安い手数料を背景にしたデイトレードが逆効果として作用しているからだ。プロは先物を使って売り仕掛けを狙う。債券と組み合わせる裁定取引だから取りっぱぐれはない(かもしれない)。損をするのは片手で株式のトレードで精一杯の素人ということになる。

☆ さて改めてあたしのポジションで考えると,信用をやらない以上売り場にもなく,このまま洞ヶ峠の筒井順慶を気取るしかないということになる。

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2006年9月18日 (月)

株式ウエブログでこれだけはやってはいけないこと

株式投資これだけはやってはいけない Book 株式投資これだけはやってはいけない

著者:東保 裕之
販売元:日本経済新聞社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

☆ 著者の東保氏は日経CNBC「TOKYOマーケットEXPRESS」の夏休み特集にも出演していたが,基本的な考え方が一貫しているので参考になる部分は多かった。

株式のウエブログを書いている人最も読んで欲しいのは,第4章4「見栄と意地は証券投資の大敵」(P.160~169)。その中でも印象的だった部分を引用したい(P.166)。

>ちなみに山一證券で最も腕の良かったディーラーE氏は,相場コメントを求められるとそれなりに親切に答えていたが,実際の売買は自分の前言と反対のことを平気で実行していた。本人いわく「さっきはそう思ったが,今は違う。それに相場観はあたり障りなく言ってあげれば相手も安心するだろうが,自分のポジションについては自分の責任で対処しなければいけないから過去の発言とは別だよ!」。

☆ これを不誠実な発言と思うのは,残念ながら相場がわかっていないことになる。むしろ誠実な発言だろう。ディーラー自分のポジションとの勝負であり,相場解説はストラテジストの仕事だからだ。売り買いの状況を見ながら臨機応変に立ち回らなければディーラーは務まらない。この本の中にも端末入力の訓練をするディーラーチームのエピソードが出てくるが,そういう職業であるという厳しさを感じて欲しい。

☆ では逆にマーケット面に載っている日経の相場コメントはどんな役に立つのか?それは前日の相場の雰囲気断片的に伝えるものと割り切って見ればいい。同じことはクロージングベルTOKYOマーケットラップなどの相場コメントでも同じだ。あくまでも全体相場の中の一部分の感想がそこにあるということだ。

☆ 自分のポジションや相場観をウエブログに書くのは,自分自身のポジションの心理的な整理になる。だがあくまでもそれは自分のポジション・トークであることを忘れてはいけない。他人のウエブログにコメントを書く時も同じで,出来る限りポジション・トークとして話すことを断っておいた方が良いと思う。

☆ あたしが基本的に自分自身のウエブログに個別銘柄の話を書かないのは,そういう理由がある。そこに書いたことで自分自身の判断を狂わせたくないし,それに縛られたくないからである。言い替えるなら銘柄の当て物で生きていけるほど相場は甘くないということは,あたしにとっては常識であるからだ。

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2006年9月16日 (土)

日本経済新聞第43347号(2006年9月15日金曜日)経済教室「公的資金完済・新しい銀行像」への反論

☆ 苦しくなったら日経の本紙に出てくるところまで加藤(アキラ)にそっくりだな,アトキンソン。お前のおかげで日本の個人投資家は銀行株でどれだけの損害を蒙ったか,今から熨斗をつけて叩き返してやるから,せいぜいその眠たそうな目をしっかり見開いてこの駄文を読むことだな。

☆ 経済教室は長文だが,要旨は右側に書かれた要旨はこうなっている。

「欧米の銀行に比べて邦銀の収益性が見劣りするのは,日本の銀行数が多く,過当競争になっているからという見方がある。しかしこれは正しくない。リテール業務の深耕が求められる中で,人員も店舗も少なすぎ,顧客基盤が狭すぎるのが主因である。」

☆ なんのことはない。日頃アトキンソンがGSのアナリストレポートに書いていることの焼き直しに過ぎない。いつだったかのレポートには(あたしには事実とは思えないのだが),アトキンソン自身が用向きで出掛けた銀行の窓口で非常に長い時間待たされたという体験談まで書いていたことがあった。

☆ ところでアトキンソンのいう「銀行」とは,どういうものであるのか?現在の欧米銀行の主要業務がかつての商業銀行タイプから投資銀行タイプに大きく変わっていることは疑う余地もない(J.P.モルガンとHSBCを例にとれば解るだろう)。銀行の収益源は手数料収入,それも様々な金融工学を駆使したレベルの高いディールによるものにウエイトがシフトしている。リテールを軽視するのではなく,リテールにかけるコストを極限まで減らそうとしている。この場合リテールそのものを縮小するのではなく,先に挙げた金融工学に基づく収益モデルをリテール分野に適用することと,ネットバンキングのような省人化モデルによりコストの合理化を図ること,それが出来ない分野は,例えば口座維持手数料のような形で小まめに収益を上げることがリテール分野での彼等のアプローチであるように思われる。

☆ 更に言えば,プライベートバンキングのようなフィナンシャル・アドバイザリーもまたリテールの中で重視すべき分野である。先日野村證券がSMA口座の小口化を行うような内容の記事が日経に出ていたが,あれも単純に間口を広げているのではなく,資産規模に応じた別個のスタイルのSMA口座を取り扱うことで,富裕層だけでなくその予備軍を獲得しようという目論見であることは疑う余地もない。

☆ 翻ってアトキンソンの論旨を見ると,まず時代認識として「主要行(メガバンクを念頭においているものと推定する)各グループの利益ベースが拡大したことにより,利益成長は格段に難しくなっている」から「成長維持にはこれまでにない戦略が求められ」るという。では戦略とは何かというと「銀行は提供するサービスを拡充して顧客資産の効率を高める戦略を構築する必要が」あり,それには「ビジネスモデルを人材集約型の戦略に転換する必要があ」るという。これは殆ど結論のようなもので,ここからはどうしてこの結論を導き出したのかという理論構築になっていく。

☆ 邦銀が人材集約型になるのかどうかは銀行経営者が考えればいいことだが,それは邦銀の活動範囲を国内に限って話しているのか,それとも海外展開について念頭に置いているのかで,結論が大きく異なってくることを指摘しておかなければなるまい。

☆ 1990年代初め,シティバンクは不動産融資等の失敗で経営危機にあった。当時の会長ジョン・リードはこれに対して行ったことは,投資銀行業務からの撤退と消費者金融への集中だった。ここでいう「消費者金融」は勿論リテールではなくコンシューマー・ファイナンスである。つまり今でこそメガバンクの雄であるシティ・コープもリードが立て直す時期においては,金利の利幅が取れるコンシューマー・ファイナンスを主軸に据えたのである。

☆ アトキンソンがそういう論点からリテール拡充と言うのであれば,それはそれなりに説得力があるようにも見える。反面,三菱東京UFJはアコムをグループに取り込んでいるし,三井住友はプロミスやモビットを使いこなそうという意図が見える。その時期に消費者金融のグレーゾーン規制が政治問題化したことは,このことと関係が無い訳もなく,世の中の事態の方がアトキンソンの提案の先を行っている観が無くもない。

☆ ここから先のアトキンソンの議論はある条件を考えた場合,滑稽としか言えない。その条件とは,1980年代後半以降の米国におけるメガマージャー(金融大再編)とそれが引き起こした欧米銀行の再編だ。この議論についていちいち反証を挙げる気がしないのでもう書かないが,それぞれの銀行が合併や買収によって拡大した基盤をベースにして議論を進めるのは,銀行株アナリストとしていかがなものかとは指摘すべきだろう。

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2006年9月13日 (水)

つらつらと

☆ つらつらと相場を見ていると,やっぱり勢いがない。いま上がっているのは,エルピーダ(増資の時にあれだけ叩いたのは,いったいどこのアナリストだったのか?),SUMCO(昨年大型上場時に早売りした値段の二倍になっている--;),NECエレなんてところ。資源株や鉄鋼株,船株当たりが上がりだした時に全然見向きもされなかった集団。この辺まで上がってきたら相場はひと回り終わったのかもしれない。

☆ 大勢・中勢は上げ相場という見方に異論はない。だが,どうも相場は下げたがっている。いや正確には(ポジション・トークであるあたしを別にしても)下げたがっている向きがいるようだ。そんな訳でいまひとつ強気になれない。ミクシィの上場で明日は少しは賑やかなんだろうが(幾らなんでももう1円の売り注文とか出すなよ。あと155万株の買い注文も^^;),いずれにせよ。連休前の相場に整理をつけたい向きがいるようで,パッとしない展開になるんじゃないかなあとすっかり弱気の虫の大合唱に飲み込まれている今日この頃でありますた。(^^)

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2006年9月11日 (月)

ストラテジストは,かく語りき。(その2)

☆ ストラテジストの話を進める前に,アナリストの仕事について書いておこう。アナリストは名前の通り分析者という意味だが,何を分析するのか?それは企業であり,その業績である。具体的な例として日経CNBCで平日の昼放送している「TOKYOマーケット・Express 」の「中・小型株解説」コーナーをみる。ここではまず,対象となる企業がどの業種に属し,どういった業務分野で構成されているかを紹介する。そこでは売上高による構成比率,利益による構成比率,業界内の地位などが示される。これらは対象企業についての基礎的な分析だ。

☆ 次に,ここからがこのコーナーにおけるアナリストの仕事の分野なのだが,各アナリストが注目する業務分野,製品(商品)等を例示し,その理由を示す。そしてその分野・製品の今後の売上げ動向を予測し,対象企業業績に与える影響を分析する。こうしてアナリストは,彼等の見立てた材料に基づく対象企業の将来動向(成長過程)をシナリオで示し,そのシナリオに基づく株価に対して現在の株価(=企業評価)がどういう位置にいるか,その結果,予測に基づけば,どの程度の株価があっても市場平均株価収益率維持できるかを示す。これがアナリストの予想株価であり,現在の株価と彼等の成長シナリオに基づく将来の予想株価との差と市場全体の成長率とのパフォーマンスとの差をもって株価格付けレーティング)を示す。こういう仕事を行っている。

☆ ただ,「中小型株解説」コーナーは9分弱しかないから,アナリストは自分のシナリオの中で最も強調したい部分を中心に解説し,そのシナリオに対するリスク要因は最後に例示的列挙するだけにとどまることになる。バラ色のシナリオに見えるのは仕方ないところだが,重要なことはレーティングやTP(目標株価)そのものではなく,そこに至るアナリスト各人の分析シナリオの巧拙なのである。残念なことに今の市場結果しか見ていないから「○×証券(のアナリスト)が◆◇銘柄の目標株価を△▲円にしました」という「事実」だけがマーケット・ノイズ(それもある程度強力もの^^;)として市場に飛び交うことになる。

☆ ここで強調したいことを再度書くが,アナリストレポートの価値結論部分(レーティング・目標株価)にあるのではなくそこに至るシナリオの巧拙にある。巧拙とは,その企業や製品に関する評価のポイントシナリオの描き方シナリオ中におけるリスク要因の分析(が十分になされているか),そしてシナリオ自体の検証。この四点に尽きる。だからマーケットノイズ的に「銘柄何某に,どこそこ証券のアナリスト(肝心のアナリストの名前すら出て来ないのが現実だ^^;)がレーティング何とかをつけ,目標株価を幾らにした」という記事で動くのではなく,日頃からどのセクターのどの銘柄に誰が通常,評価をしているのかに興味を持った方が良いと思う。

☆ そのことは同じひとりのアナリストのレポートを読む場合に,大きな差になって現れる。彼がどういう銘柄を評価する傾向があるとか,会社の都合でコロコロ推奨銘柄を変えるなどといった事実がそこから浮かび上がってくるからである。そしてこうした評価方法は基本的にストラテジストの評価についても有効である。

=続く=

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2006年9月 8日 (金)

ストラテジストは,かく語りき。(その1=はじめり)

【トリセツ】

☆ 本稿は,証券会社のストラテジストや彼らの言説どのように付き合っていけばいいかを考えるために書かれたもので,どう間違っても「あたし=ストラテジスト」と誤解されぬよう,ひとえにお願い致します。m(_ _ )m

【本文^^;)】

☆ 品格論ではないが,格調あるタイトルは平易にしない方が良いと思う。「ツァラトストラはこう言った」。。。では,ニーチェもガックリ来るだろう(笑)。もちろん本文は平仮名・現代仮名遣いで構わないのだが,タイトルくらい文語でもいいじゃないかということで。。。

☆ とまあ,キューブリックもヨハン・シュトラウスも影も見せないまま,枕を切り上げて(^▽^;)本題に入る。ストラテジストというのは直訳すれば戦略家とか策士ということになる。戦略とは,戦争や社会運動等を行う上での長期的な計略のことで,より具体的・実際(実践)的なものである戦術よりも大局的・長期的なものをいう。

☆ 株式市場におけるストラテジー(戦術)を考える場合,相場がランダムウィーク(千鳥足)に喩えられることを思えば,長期的な戦略の立て方は注意する必要がある。よくある「長期投資とは何か」という議論を考えてみれば解るが,単に「値が上がらないからずっと持っておく」ことも長期投資ではないし,逆に「長期投資だから売ってはいけない」ということでもない。

個別株の投資ストラテジーの要点は「その銘柄を買った(売った)目的が果たせているのかどうか」ということで,これは言い換えれば,銘柄の「出口戦略」が整ったかどうかともいえる。この場合の「出口」は二箇所あって,ひとつは戦略を成功裏に終わらせた後の出口(つまり貴方の売り(買い)注文の相手の存在)であり,もう一つは「非常口」すなわちロスカット戦略ということになる。

☆ それでは,株式市場全体のストラテジーは何のために必要なのか?それは市場の体温を感じ取り,相場の冷却感,過熱感を読み取りながら,当面の自分自身の投資「戦略」を考える必要があるというところにある。株式市場において投資戦略を考えるべき時期は,たくさんある訳でもない。通常,市場は上げか下げかいずれかのトレンドに従って推移する。そこには銘柄材料(テーマ)や市場全体の指向,参加者の気分などのあらゆる変数が揃っており,それらはブラウン運動よろしく想定し難い動きを常に続けている。しかし,そうした気分株式指標の面から捕捉することは可能だ。出来高,売買高,値付率,騰落レシオ,売買高上位銘柄占有率etcそういった諸指標によって相場の雰囲気は何気なく漂ってくるのである。

テクニカル指標はこの雰囲気をさらに明確にする。ただテクニカル指標の中には同じ条件で全く逆の結論を導き出しうるものがあり(いわゆるダマシ),自分にとってどの指標をメインに使うかは,ある程度の経験痛い目に遭うことを含む)がないと身に付かないと思う。また,テクニカルの中には全体の戦略を考える時よりも個別の戦術を考える時に向いているもも少なくないので,最初に大局観としての戦略を持った上で,戦術を考える際にテクニカルを駆使するのが効果的なように思える。

☆ 投資戦略を考える時にファンダメンタルズはどの程度重視すべきか。これは難しい問いだ。よく「私はテクニカル・オンリーで,ファンダメンタルズは重視しない」と言う人がいる。結果的にはその通りなのだろうが,テクニカルが示す株価の「歴史」には,前提としてファンダメンタルズなどに基づく「銘柄の人気化」という事実があることを軽視すべきではない。テクニカルに現れるのは銘柄の人気・不人気の歴史でもあり,相場という長い直線上に現れる参加者の心理の反映でもあるのだ。

=続く=

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2006年9月 5日 (火)

ウチ目均考(12)~経済教室 新会社法と金融商品取引法 感想

経済教室 新会社法と金融商品取引法 感想
(日本経済新聞 第43338号(2006年9月5日)第27面 神田秀樹 東京大学教授)

☆ 日本経済新聞の社説に相応しい議論,問題提起だと思う。もっとも昨日指摘したように,斯界の権威の力を借りないと,これを書けないのが現在の日本経済新聞というメディアの実情である。

☆ 日経のことはどうでも良く,本論に入る。神田教授は,まず「新」会社法の考えていることは分量に比べシンプルであり,かつ世界の流れに沿ったものだと指摘する。会社法施行に伴う影響について教授は次の五点を指摘する。(1)組織形態と組織再編の自由度の高まり(2)機関設計の自由度の高まり(3)経営の透明性と説明責任の向上(4)会計の適正化の向上(5)大規模会社において内部統制システムが適正に機能すること。

☆ これを序論として,教授は「金融商品取引法(現:証券取引法。本稿でも以下「証券取引法」を用いる)」について論を進める。議論の前提として昭和40年代の粉飾決算事件(サンウエーブ工業事件,山陽特殊鋼事件,日本熱学事件辺りを前提?)との比較から,商法(会社法)による企業規律から証券取引法における投資家保護の裏面としての企業統治に重点が移ってきたことを指摘する。ここで教授は会社法と証券取引法を統合した「公開会社法」を作るべきだろいう意見を引用し,これに賛意を示している。

☆ 神田教授が指摘するように,今後は大企業(評者注:公開企業およびそれと同等のものと推定)にとって「証券取引法の重要性が格段に増す」ことになるし,仮に先ほど述べた「公開会社法」が施行されるとすれば,「公開会社の企業統治は証券市場が要求する情報開示・会計・監査・コンプライアンスなどの要求を確実に担えるものでなければならない」だろうし,「企業統治と責任体制についても,(中略)企業集団ベースでとらえるべき」ことになると思う。

☆ 神田教授が指摘するように,「会社法と金融商品取引法の施行は日本の法制度を世界に遜色ないものにするのに不可欠な改革である」一方,現在進行中の「イノシシ」裁判や「誤発注祭り」などに表層的に現れるように「株式市場の信頼を大きく揺るがす事態」が実際に発生している。この点でも教授の認識は明快で「株式市場は自由な市場であることを基本としながらも厳しい倫理と規律が求められる国にとっての重要な資産」だという。そして「その基本はそこに参加するヒト」であるから,株式市場について法がなすべきことは,「その信頼の回復・確保」であり「公正さと透明さを法が守り抜く必要がある」。そのためには「相場操縦やインサイダー取引その他の不公正な取引を法が厳しく監視・禁止し,受託者責任(業者が顧客に対して負う義務)を法が厳しく問うなど,法がもっと前面に出る必要がある」。

☆ 敢えて評するまでもない。ここまで明快な認識があれば,何のために資本市場が存在するのかといった根源的かつ皮肉な質問にも回答できるだろう。そして受託者責任を全うし得ない日本経済新聞社元従業員の不祥事に対しても,強烈な皮肉に聞こえるのだが。。。

☆ 興味深かったのは「最近の一連の詐欺的な事件をどう評価すべきであろうか」という後段。一部にある「規制緩和が生んだ弊害」という俗説を排し,「問題は,規制改革や構造改革「後」のルール不足だ」と指摘する。この「規制改革」とは神田教授なりの造語で単に緩和(=緩めた)のではなく,規制から自律へと制度を改革したのだという認識がある。

☆ 神田教授が言うように「市場の公正さを担保するに十分なルール」の整備とその実現(エンフォースメント=enforcement「法律の施行」などの意味を持つ)体制の確保が喫緊の課題」だ。特に現行制度の不備を突いたグレーゾーン金融工学を放置するのは,ある意味市場内「オレオレ詐欺」みたいなものだし,「会社ごっこ企業」の退出は資本市場の健全化には欠かせない。両者およびアナリストの「メーク・マーケット」問題は,いい加減で個人投資家(ひと握りを除く)保護を空文にしないためにも必要不可欠ではないかと感じる。

☆ このあとも重要な指摘がある。教授は「企業価値とは何か」とも書いているが,要は「株主の利益か従業員の利益か」「会社は誰のものか」という問題だ。これを言い換えると「株主の利益と従業員の利益がどこで両立しどこで両立しないのか」という事だという。

☆ 神田教授は一般解として「企業によりその置かれた状況により異なる」とし,続けて「企業統治の問題をどう受け止め,どのように対処したらよいのか」と言い換えたうえで「企業統治とは,不祥事を防止し,企業が繁栄するするための仕組み」「企業価値を高めるための仕組み」であるから,欧米に学びつつも日本流の「器用な」統治方法を作らなければならないとまとめている。

☆ これは非常に重要な指摘だ。デフレ期にムーディーズがトヨタ自動車を「日本的労使慣行に固執すること」を理由に格下げして物議を醸した。結論から言えば正しかったのはトヨタ自動車である。が,反面グローバル化の進展と共にトヨタ自動車にとっては生命線と思われる品質保証に綻びが生じているのも事実だ。こうしたところに日本流を求める難しさがあるように思う。

☆ また株主の利益については,たまたま先日の日経が紹介していたJ&J社の「我が信条」が参考になるだろう。「我が信条」では株主の利益は四番目に重要なものとされる。記事にもあるがそこにはこう書かれている。「我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。事業は健全な利益を生まなければならない。我々は新しい考えを試みなければならない。研究開発は継続され、革新的な企画は開発され、失敗は償わなければならない。新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。 逆境の時に備えて蓄積をおこなわなければならない。 これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。」これ以上の回答があるだろうか? 

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2006年9月 4日 (月)

ウチ目均考(11)~犠牲バント失敗?

☆ 2ちゃんねるの攻撃用の落書きに「だめなやつはなにをやってもだめ」というのがある(これを直線等をを駆使してデカイ字で画面いっぱいに書きなぐる)が,ダメな組織は人が変わってもとことん駄目らしい。今朝来た日本経済新聞第43337号を読みながらつくづく思った。別に記事そのものに何か問題がある訳でもないので紹介するが,ひとつは5面(オピニオン)その名も格調高い「核心」欄。署名者は産業畑の編集委員からコラムニストに昇格した西岡幸一である。

☆ 西岡ほどの書き手でもオヤジギャグもどきの「半勝ち王子の犠牲バント」なんて,あたしらですら遠慮するようなしょうもないタイトルの記事を書くものかと呆れている。しかも残念な事にその視点は後で法務面に出てくる三宅伸吾の分析記事と似たり寄ったりだ。西岡が書きたい事を縮めて言うと,今回のTOBは経営者に「常在戦場」意識を植え付けM&Aを身近に感じさせたから犠牲バント程度の効果はあったということだ。

☆ だが本当にそうだろうか?西岡自身が途中書いているように「世界の製紙業界を冷静に見れば」王子の戦略(=まず国内の消耗戦を止める)が過ちと言えたか?昨年はフィンランドの製紙大手企業のストライキという需給要因があったにもかかわらず,市況軟化に歯止めはかからなかった。シンガポールのAPPはいつでも塗工紙を輸出可能な体制を東アジア圏内に築いている。王子,日本の両者が揃って中国進出に失敗し見直しを余儀なくされたのも昨年から今年にかけての状況だ。こんな状況で「犠牲バント」が及ぼす影響は,紙・パ業界に更なる競争を巻き起こし,消耗戦を強いるだけ以外の何があるのだろうか。

☆ さらに紙・パ業界の構造問題は,上流(生産)より中流(卸),下流(販売)にあることくらい,産業部の記者ならず商品部の記者にだって分かりそうなもの。それを議論の中に入れずにM&A状況の今昔物語など眠たい内容を書くのがコラムニストの使命なのか?

☆ もう少し「異論」を書くべきではないか?M&Aに関する分かり切った視点の話は三宅のていねいな分析で十分だ。西岡が大所高所というのであれば,産業として日本の紙・パルプ業界はこのままで良いのか,今回のM&A対抗手法は,理屈や感情論では正しくとも,この業界全体の問題としてはどうだったのか。それを東アジア全体で俯瞰して考えたらどうなのか?そういった視点から私見を書いて初めてコラムニストの名に値するのではないか。

☆ こうした全体を通観した総論は確かにコラム的には無難かもしれないが,そんなものを木鐸とは言わないし,言う資格もない。

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